となりの部屋
膝を抱えるように、
必死に自分を守るように
うずくまっている、栗原さん。
パジャマ姿で、
長い緩いパーマのかかった
茶色い髪。
俺は、怖がらせないように
小声でそっと話しかけた。
「玄関に居る奴、知り合い?」
返ってくる言葉は、
分かっているのに
初対面と言っていい程
交流のなかった俺らだから
うまく言葉を見つけられなかった。
栗原さんは、顔を見上げ
俺の方を見た。
大きな瞳に、たっぷりの
涙が溜まっていた。
そして一生懸命に
首を横に振る。
「とりあえず、警察っと。」
今にも、壊れてしまいそうな
彼女に
俺は手を差し出した。