桜に、溺れた。
プロローグ
古くから続く名家、日立院家は周囲の者達に酷く気味悪がられていた。
広大な日本庭園には桜の樹が数えきれないほど植えられ、立派な渡り廊下のある屋敷は物々しい雰囲気を醸し出していた。
高い塀に囲まれ、街を一望できる場所に建っている様子は、何百年もの時を越えているのだろう。
寄り付く者など、一人もいない。
美顔の家系は人々を更に震え上がらせた。