ラヴレター(仮)
国民的歌番組のオープニングが流れ、思わず手を止めた。有名アーティストに続いて一番最後に登場した4人組に思わずにやけてしまう。

拍手と少なくない黄色い声援。
キャップを被った年下ギタリストにじゃれあう一平。緊張でどこかぎこちない他の3人に比べて、いつも通りのドラマー。大物だ。



紹介とともに数秒だけ4人が画面いっぱいに映ったとき、会釈をする様子に思わず笑った。いつもの彼らからは考えられない殊勝さで。


一旦コマーシャルへを変わり、コーヒーでも飲もうとガスコンロのつまみを捻るために手を伸ばした。そこであたしの手がカタカタと震えていることき気付く。
あたしも緊張している。初めてのテレビ出演、関係のないあたしまで、震えるほどに緊張が張り詰めている。

伸ばした右手を左手で包み込んで、胸に引き寄せる。



「あたしまで緊張するなんて、……もう、関係ないのに」



自嘲気味にあたしは笑った。
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