君は変人
私は中途半端だ。

正式な部員でもなければ、練習の欠席も多い。

でも、部員の中には真面目で練習熱心な人もいるんだ。


「美雪だろ」

「私は美雪がいたから、こうやってバスケが出来ているんだ。
私が入れば自分がスタメン落ちすることを分かっていて、私に声をかけた。
そんな美雪を本当に傷つけることは、出来ない」

美雪には本当に感謝している。

私にとって玲菜と美雪は、唯一の女友達だ。

それも、本当に大切な。


「でも」と言いかけた田上の言葉を遮り、やめよう、と言った。

田上はそれ以上そのことについては、言わなかった。

ただ、それ以上厄介な話題を出してきたのだ。


「桜と付き合ってないよね?」

え、と声を漏らす前に田上は続けた。


「最近、今まで以上に仲良くなったって聞いたから」


それは、とてつもない勘違いだ、とは言わない。

桜の秘密を知ってから、気を許した感が漂い、仲良くなったように見えるが、まだまだ壁は厚い。

でも、桜の秘密を知ってるのは私だけなのだから、大きな進歩と言ってもいいのかもしれない。


「それはない。
それ以前に桜には、恋愛感情がないんだから」

「そんなの分かんないよ。
だって現に、好きじゃなくても付き合う奴いるじゃん」

確かにそうだ、と納得する。


小学校の6年間をアメリカで過ごし、中学で日本に来てとても驚いた記憶がある。

多分、これは日本だから、とかいう問題ではなく、皆が大人に近づいているということなのだろう。

付き合う、というのはお互い好き同士がなるものだと思っていたのだが、恋人欲しさというのもあるらしい。

恋愛に鈍い私には、それの詳しい事情は分からないのだが。


「それは、田上のことか?」

話をそらすつもりで、言った。


「桜のこと好きなの?」

いつものニヤけ顔から一変し、急に真剣な表情で見つめてくるから、私は急いで目をそらした。

こいつ、こんなに格好良かったか?と、戸惑いを隠せなかった。



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