君は変人
朝礼の合図のチャイムが鳴り終わるのとほぼ同時に、私は席に着いた。

すると、隣の玲菜がこんこんと私の机を叩いた。


「おはよっ」

「おはよう」

「今日も遅いんだね。
川さん、去年は誰よりも早かったのに」

朝は苦手のくせに、学校には早く行っていた。

矛盾しているように思えるだろうが、それは違う。

学校に来るのは早いが、起きているとは限らない。


私は学校に早く来て、熟睡していたのだ。

誰にでも寝やすい場所と言うのはあると思う。

それが私にとって、教室の自分の机だった。


「ああ。まあ」

と、私は口を濁らした。


別に悪いことをしているわけではない。

ただ単に、朝体育館でバスケの1対1をして、いわば朝練をしているだけのことだ。

でも何故か、桜が好きなのに、他の男子と二人きりで朝から会っていることが、いけないことのように思えた。



「そう言えば、聞きたかったのだが、源とはいつから付き合ってたんだ?」


帰りは最近ほとんど違うから、去年に比べれば、話す時間は減っていた。

だから、いつの間にか聞くタイミングを失っていたんだ。

今日は桜も源も朝から職員室に呼ばれていて、いない。

こんなナイスタイミングは、他にない。


「え~聞きたい?聞きたい?」

玲菜はニヤけながら、言った。

「いや、じゃあいい」

実に簡潔に爽快に言った。

あいにく、ノロケを笑顔で聞けるほどの、気が利く要素は持ち合わせていない。


「ひっどー。
もったいぶらないから、聞いてっ」

聞かなければ良かった、と後悔。


「ホワイトデーに付き合い始めたの」

ああ、あの日か。

と、自分の中で思い出しながら、相槌を打つ。

桜と私、玲菜と源、というようにバレンタインと同様に二つに分かれた。



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