君は変人
「桜と川さんはどうだったの?」
「うん、普通」
あんまり自分の恋愛話を語るのは好きじゃない。
というより、玲菜に桜が好きなことを言った記憶がないのだが。
「ねえ、私、玲菜に桜が好きって言ったことある?」
非常に失礼な質問かもしれない、と言ってから気付く。
大抵女子というのは、自分の好きな人を暴露するなど恋バナといわれることをして、互いの信頼や仲を深めていくらしい。
私は自分の照れや恥じらい、またはタイミングを気にし、一切その話をしたことはなかった。
「ん?ないよー」
玲菜はいつも通りの間延びした声だった。
ごめんね、と私は呟いたが、玲菜は聞こえてないフリをした。
照れくさかったのだろうか。
「源から聞いたの?」
「ううん。
見てれば分かるよ、それくらい」
「私、もしかしてすごく分かりやすかったりする?」
自分を客観視するのは得意なのだが、恋愛だけは苦手中の苦手としていた。
「それは、大丈夫。
だって川さん、顔に出ないんだもん」
「じゃあ、何で・・・・・・」
相変わらず鈍いなあ、と玲菜はわざとらしくため息をついてから言った。
「友達なんだから、見てれば分かるんだって」
“友達”という言葉が胸に響く。
友達になろう、と言ってくれた玲菜の優しさに改めて触れた。
ごめん、とまた呟いた。
今度は玲菜は、うん、と背を向けて言った。
「で、バレンタインとかホワイトデーどうだったの?
もう、そろそろ川さんと恋バナしてみたいし」
笑顔で言う玲菜を見て、同性ながら、その可愛さを羨ましく思う。
「初めてだから、うまくできないかもしれない」
「うまいとか下手とか、ないよ。
だって、恋愛は十人十色だもん」