君は変人
「え、あーまあ、うん」
曖昧にはぐらかすゲンに、しつこく問いただそうか迷ったが、やめた。
誰にだって触れられたくないことは、一つや二つあるんだから。
その人が女の子じゃないなら、何も言わない。
女の子じゃないなら、ね?
「男子だよね?」
「ああ」
「ふーん。
じゃあ、いいや」
そこで、授業終了のチャイムが鳴った。
当番の号令で立ち上がり、挨拶をして、それが終わるのとほぼ同時に、桜は理科室から出て行った。
それを追いかけるように、川さんが理科室から出て行った。
ゲンがあたしの腕を強く引っ張り、川さんの後を追っていることに気付く。
「どこ行ったのかなー?」
走りながらということもあり、いつも以上に間延びした声になってしまう。
「屋上じゃねえかな?」
「え!屋上?
初めて行くんだけどー」
教室から遠いこともあり、それに先輩が昼休みはほとんど使うので、一度も行ったことはなかった。
「とりあえず、静かにしよう。
何か話しているようだし」
盗み聞きは嫌だけど、せっかくの2人きりを邪魔するのは、もっと嫌だ。
あたしもゲンが息を潜めると、簡単に二人の会話は聞こえてきた。