君は変人
少し経って、二人はあの携帯小説について話しだした。
穏やかな空気が流れていることは、戸を挟んでいても分かった。
つんつんとカッターシャツを引っ張られ、ゲンが階段を指さしていることに気付く。
縦に首を振ると、ゲンはあたしの手を優しく握り、階段をゆっくりと下りて行った。
「やっぱ、何かあったんだろうな」
「うん、だね」
何となくだった予想は、ほぼ確信に変わった。
どこか気を許された感がある。
少なくとも、あんな桜、あたしには見せてくれない。
「聞いてみよっかなー」
「いや、絶対言わないだろ」
「そんなの、分かんないよー?」
こないだあたしは初めて川さんと恋バナしたんだ、と胸を張りたくなったが、やめた。
ゲンはもっと前からだし、とふて腐れそうになったからだ。
「でも、自分に置き換えてみろよ?
周りが知らない好きな奴の秘密を、俺なら絶対に自分だけのものにしたいけどな」