君は変人
「そう言われると・・・・・・そうかもしれない」

「つか、そうだよ」

階段を全て降り終え、残るは教室への廊下だけとなった。

教室に入って、周りが何となくギクシャクしていることに気づき、あたしとゲンは顔を見合わせた。

やはり、うちのクラスの、いやこの学校全体の大物二人が、消えたのだから、それなりの動揺はあったのだろう。


「玲菜、川さん大丈夫なの?」


背後から声をかけたのは、美雪だった。

面倒見も良く、真面目だから、学級委員もしていて良い子だけど、果たして川さんを浅川さんと呼ばないほどの関係があっただろうか。

隣のゲンをちらっと見ると、口パクでバスケと早口で言った。

ああ、と納得する。

同時に若干のジェラシー。


「うん、二人とも大丈夫」

「みんな、すごく心配してたんだ」

美雪が今にも消え入りそうな声で言うから、少々戸惑ってしまう。


「そうなの?」

「うん。だって、あの二人だからね。
隠れてファンクラブ作ってる子もいるし、密かに片思いしてる人もいるんだよ」


知らなかった、とあたしは無意識に声が出る。

川さんは良く分かるけど、あの桜にもいるとは。

口が裂けても川さんには言わないとこう、と密かに誓う。


そこで、教室のドアが開いた音がした。

皆の視線が一斉に集まる。


「すまない。
変なところを見せてしまって。
だけど、気にしないでくれ。
俺は、桜だ」

いつも通り、良く通る声で桜は言った。

隣で川さんが眉間に皴を寄せているのを見て、また周りに安堵の声が漏れる。

ああ、良かったいつも通りだ、と。

全く、あの2人には叶わない。

何か惹きつけるものがあるんだよなあ、としみじみ思ってしまう。



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