君は変人

6限のチャイムが鳴り、屋上を出ることにした。


「田上には、いつ言うんだ?」


「明日にしようかと思ってる。
今日1日、もう一回ゆっくり考えようと思って」


本当は違う。

もう答えは、とうに決まっている。


だけど、私は多分期待している。

ドラマや漫画、携帯小説のような、劇的な展開を。


桜が私を引き止めるとか、桜が私を必要としてくれるとか、そんなこと。


起こらないって、頭では痛いほど分かっているのに、期待してしまう。



恋って、すごい。



理屈とか、そんなの結局は、どうでもいい気がしてくる。

たった1%の確率に賭けてみたくなるんだ。



「そっか。まあ、それが妥当だな」


「うん」


前を歩いている玲菜に追いつこうとしたときに、もう1度源に声を掛けられた。


「幸せになれよ、少しは」


その言葉に、また涙が出そうになった。

今日の涙腺は、緩すぎると思いつつ、答えた。


「こんなにいい友達を持った時点で、私は幸せ者よ」


玲菜が振り返り、にかっと、満面の笑みを浮かべた。


「あたしも、あたしも!」


心から思う。

この二人が、私の友達で良かった、と。




< 117 / 145 >

この作品をシェア

pagetop