君は変人
6限のチャイムが鳴り、屋上を出ることにした。
「田上には、いつ言うんだ?」
「明日にしようかと思ってる。
今日1日、もう一回ゆっくり考えようと思って」
本当は違う。
もう答えは、とうに決まっている。
だけど、私は多分期待している。
ドラマや漫画、携帯小説のような、劇的な展開を。
桜が私を引き止めるとか、桜が私を必要としてくれるとか、そんなこと。
起こらないって、頭では痛いほど分かっているのに、期待してしまう。
恋って、すごい。
理屈とか、そんなの結局は、どうでもいい気がしてくる。
たった1%の確率に賭けてみたくなるんだ。
「そっか。まあ、それが妥当だな」
「うん」
前を歩いている玲菜に追いつこうとしたときに、もう1度源に声を掛けられた。
「幸せになれよ、少しは」
その言葉に、また涙が出そうになった。
今日の涙腺は、緩すぎると思いつつ、答えた。
「こんなにいい友達を持った時点で、私は幸せ者よ」
玲菜が振り返り、にかっと、満面の笑みを浮かべた。
「あたしも、あたしも!」
心から思う。
この二人が、私の友達で良かった、と。