君は変人
こんなこと言っちゃだめなんだろうけど、と申し訳なさそうに玲菜は切り出した。
「やっぱり、桜の隣は川さんしかいないと思うの。
川さんには田上もいるかもしれないけど、だけど少なくとも桜は川さん以外考えられないよ」
「過去に戻れねえかな?」
素直に思った。
1年前に戻って、桜の普通でない恋愛論を聞いて、桜のつまらないことに付き合って、先生にとてつもなく睨まれて、そんな今までに戻りたい。
どこから間違えた?
俺は、何も欲しくなかった。
ただ、あの4人の関係をずっと、ずっと、そのまま保っていきたかった。
「戻ったって、変わらないよ。
きっと、また同じことが繰り返されるんだよ。
どんなに川さんと田上が出会わないようにしたって、それはもう出会っちゃうんだよ」
「あれか?
あのー・・・・・・何だっけ。そのー」
俺が思い出せずにいると、玲菜は人差し指をピンと立てて、言った。
「運命論。でしょ?」
「そう、それ。
女って本当に、運命だの偶然だの、好きだよな」
「自分で引きつけた運命、の方が正しいかな?
女子ってさ、やっぱりロマンチックなことに憧れるんだよ。
でもね、それはあたしが一生懸命手繰り寄せたものを、それが必然とか偶然だったとしても、運命って名付けてあげたくなるってことじゃないかな?」
「結局は、まあ、運命論だろう?」
俺にしたら、必然も偶然も、運命も全て同じに聞こえる。
どこに違いがあって、どれが良くて、どれが悪いのかさえも、実際のことを言うと、分からない。
「これだから、男って嫌。
何でこうも、素直になれないわけ?
ねえ、ゲンは誰が好き?
それで、あたしは誰が好き?」
顔をしかめながら、近寄ってくる玲菜に、圧倒されながら俺は答えた。