君は変人
うん、と大野さんはほほ笑むと、口を開いた。
「九月になったら、運動会があるでしょ?」
曖昧に頷くと、続けた。
「クラスから二人、委員を出さないといけないの。
あ、大したことはしなくていいんだけど。
それ、気づいたら期限過ぎてたから、勝手にきめちゃったの」
あー嫌な予感。
とてつもなく分かる、あなたの言いたいことが。
「百合ちゃんと、桜くんにしちゃった」
妙に乗り気な大野さんを不快にさえ思いながら、私は嫌悪感をむき出しにする。
「あの、言いませんでしたっけ。
私、田上健吾と付き合い始めたんです」
「うん、聞いたわ、前に」
「じゃあ、言いたいこと分かりますよね。
彼を、心配させたくないんです」
普通のことを訴えたのに、なぜか大野さんは顔を綻ばせ、まだまだ子供ね、と言った。
このとき、初めて大野さんを年上の女性だと思ったといっても、過言ではない。
でも、そのくらい、大野さんは大人っぽいどこか見下した笑みを浮かべた。
「係やるくらい、大したことないじゃない。
だって、二人で帰ったりもしてたでしょ?」
「あの時は、誰とも付き合ってませんでした」
自然と口調が強くなる自分を、必死で押さえる。
「桜くんのこと、好きなんでしょう?」
声色は全く変わっていないのに、なぜか大野さんの声が大きく聞こえる。
ああ、胸に響いているのか。
だから、こんなに目頭が熱くなって、奥歯を自然とかみしめてしまうのか。