君は変人


桜が泣いている。

自信家で屁理屈で、人とどこか距離を置く桜が、私の胸の中でひっそりと泣いている。



ねえ、君はもう十分人間らしいよ。



小さく呟いた言葉が桜に届いたのかどうか、分からない。

しがみ付くようにポロシャツを握る桜が、今どんな思いでいるのかも分からない。


ただ、桜の言葉が記号なんかじゃないことは確かだ。

たくさんの人が彼の言葉に感動し、一時でも彼に尊敬の念を向ける。


悩んだり、泣いたり、感情を露にする桜は、凄く人間らしい。


だから、君はきっと人を好きになる。

私以外の人を好きになっても構わない。


どうか、お願いだから、人を愛する喜びを知って、そんな悲しい涙を流さなくて済むようになりますように。





< 138 / 145 >

この作品をシェア

pagetop