君は変人
はげに、はげは禁句なんだよ、と思う。

理科教師は血相を変えて怒りだし、桜を怒鳴りつけた。

桜も負けじと反抗したが、最終的には放課後に中庭掃除をペナルティとして付けられたのだ。






「これ、いつになったら終わるのかなー?」

玲菜はさっきから何度も時計を見て、手が全く動いていない。

彼氏とデートの約束でもしているのだろう。

面白くない。本当に。


「多分、桜が真面目に掃除したらじゃない?」

「そうだな。あいつのことだから、どっかから見てるぜ」


俺は言いながら学校を見渡したが、視力的に見つけられなかった。

だけど、山田がどこかで見ていることは絶対と言いきれた。


「俺は、いつも真面目だ」


桜の一言を俺たちは無視した。

反応がなくても、桜は一人で話しだす。

呆れるほどの、演説だ。

もちろん、全く手は動いていない。





「帰ろう。責任は俺が取る」

桜はいつも断定口調だ。

だから俺たちには選択肢がなく、気が付けば桜は学生鞄を手に持っていた。


もう五時半近くだったし、家に帰ってもすることはないのだが、こんなに寒い中庭にいるくらいなら、と思ったのだ。

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