君は変人
「百合?聞いてるか?」

私の顔の前で手を振りながら、桜は言った。

「あ、ごめん。ぼーっとしてた」

「百合がぼーっとするなんて、珍しいな」

「今、一年前のこと思い出してた」


私は過去を思い出すたびに、思うことがある。

そして、それを口に出していいのかを迷う。


「一年前か。懐かしいな。
そう言えば、この公園は記念すべき俺が初めて乗ったブランコの場所じゃないか」

「あのときは、本当に寒かった」

中庭掃除をやらされた上に、公園にまで付き合わされたのだ。


「スーの彼氏が来た時は驚いた。俺をスーの男だと勘違いしたからな」


そうあの時玲菜は、彼氏との約束を忘れ、私たちとのんきに公園で遊んでいた。

中庭掃除をしている時は、時間ばかり気にしていたのに。

そんな玲菜に激怒した彼は、勝手に桜と浮気していると勘違いしたのだ。


「玲菜!お前、こんな変人と付き合ってるのか?
顔と頭しかない男じゃないか」

桜がその彼のものまねをした。

確かに桜は普通にしていたら、顔が整っていて頭もよく、格好いいだろう。

しかし、口を開けばただの変人だ。


「顔と頭がよくて、他に何が必要なんだ?」と桜は言い、その上、彼女より頭が悪い男なんて最低だとも言った。

そして、桜は追い打ちをかけた。


「それなら、スーの彼氏は頼朝しかいない」


桜は無表情で言う。

それはなぜか、とても説得力がある。

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