君は変人
ゲンは照れてるのだろう。あたしに背を向けている。

そんな後ろ姿を見ていると、川さんと桜が来た。


「お邪魔していいか?」


桜がニヤニヤ笑いながら言った。

うんうん、と頷くとやっとゲンは振り返った。

まだ顔は赤いけど。


「仲いいのはいいことだけど、その恥ずかしい会話全部聞こえてるから」

川さんの鋭いつっこみには毎度毎度どきっとする。

確かに、よく教室を見渡すと注目されていることに気づく。


「そっちこそ、かなりいい感じなのでは?」

茶化す感じで言った。


川さんのことだから、冷静な返答が返ってくるだろうと思った。

そう思ったのだ。

しかし、予想外の反応を川さんは見せた。


「な、何言ってるのよ」


川さんが言葉を詰まらせた。

川さんが顔を赤く染めている。

川さんが次の言葉を考えている。


初めて見る仕草に、あたしは初めて川さんの人間らしさ、いや女の子らしさを知った気がする。

桜は口笛を吹きだす。

本当のことを言えば、このまま追及して桜をいじめてもいいのだけど、さすがに川さんが可哀そうだなと思い、やめた。

ゲンが何か言うかな、と様子を伺うが、今はそれどころじゃないみたいだ。


「さっきさ、何話してたの?」

「海でも行くかって話してたんだ」

桜の素早い返事に少々驚く。


「え、海に二人で!?」

良く考えれば、海なんてデートスポットの王道じゃないか。

「なんだ?玲菜と頼朝も一緒に行くか?」

そういう意味じゃない、と言う前に桜は川さんに承諾を取っている。

まあ、いいか。
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