君は変人
「ぶっちゃけると、向いてないと思います」


自分で言いながら、ぶっちゃけてるなと思う。

言っていいのか悪いかは別にして、告げた。

大野さんは、肩を落とした。

泣かれない程度にしなくては、と心に決める。


「ただ、先生に向いているか向いていないかが問題ではなく、大事なのはいい先生になれるか、なれないか、ではないでしょうか」

「それは、向いてるか向いてないかと同じじゃない?」

ナイスツッコミ。

そう言われると普通の人は詰まるだろうけど、毎日嫌と言うほど屁理屈を聞かされている私は、そういう対処には慣れていた。


「先生たちが思っているいい先生と、私たちが思っているいい先生は違うんです。
向いてる向いてないは、先生たちが勝手に決める基準です。
でも、いい先生は生徒がちゃんと分かっていますよ。
私は、大野先生のこといい先生だと思っています」

そう言って、満面の営業スマイルを大野さんに向けた。

笑うのは苦手なのだが、今回の中庭掃除のことについては私も関係してたので、大サービスってやつだ。


「うっ、うっ、百合ちゃ~ん」

大野さんは座っていた椅子が音をたてて倒れるのも気にせず、私の肩につかまった。

私はほぼ抱き枕状態になっていた。

結局、泣かせてしまった。


ボディタッチも泣かれることも、どちらかと言えば嫌いだ。

まあ、でも月1ペースなら大目にみよう。

ポンポンと時折肩を叩いたり、慰めの言葉や励ましの言葉をかけた。



もうとっくに6限の学級会は終わっただろうし、終礼も終わって帰宅部も下校しただろうか。

今回の拘束時間は、1時間と20分。

日に日に長くなっている気もする。


まあ、どうせ帰宅部なのだから気にしないが。



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