君は変人
あれから、一年。


「川さんと、また同じクラスだあ」


長髪の女子、石川玲菜とはあの自己紹介がきっかけというわけではないが、仲が良い。

彼女は人当たりがよく、男女ともから好かれていた。

桜を除いてだが。

玲菜は、恋愛に生きる女子と言っても過言ではなく、そのせいか桜とは合わないのだ。


「おっす。また同じクラスだな」


そう声をかけてきたのは、あのときの体格のいい男子の源厚志。



「あいつも、でしょ?」

「まあ、あいつも、だな。
あいつがいると面白いけど。
てか、あいつと口喧嘩する勇者は、玲菜ぐらいだ」

「え!そうなの?川さんもそれなら勇者じゃない?」と、玲菜は言った。


「いや、私はつっこんでるだけで、あの人の理論に対抗しようとは思わない」

私が言うと、源は、だろ?と玲菜に微笑んでいた。


「おい諸君たち、一体誰の話をしているんだ?」

あ、桜、と声が漏れる。


「そうだ。俺は桜だ」

桜はそう言い、なぜか胸を張った。


「そう言えば、俺たちの担任、またあいつのようだ」


桜のさす、あいつ、とは新米教師のことだ。


新米教師と呼ぶのも長いので、大野先生という列記とした名前を覚えてあげよう。

だが、どうも私はあの人のことを先生とは思えず、内心では大野さんと呼んでいる。



去年はあの教師がいつ死んでしまってもおかしくない、というくらい、桜はいろいろ迷惑をかけた。

桜はかなりの屁理屈野郎だ。

授業中寝ているだけならいいのだが、起きているときはとてつもなく教師に向かって異議を唱えるのだ。

ほとんどの先生は、桜が眠ったり、ボーっとすることを望むのだが、中にはそんな桜に対抗心をむき出しにする教師もいる。

そのしっぺ返しは、全て大野さんに行くのだ。


しかし、大野さんにとって唯一良かったのは、私という良いガス抜きがいたことだろう。

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