君は変人
桜は用事があると言い出し、浅川は学級会から姿が見えないし、玲菜とはあれから話していない。

まあ、どうせ、彼氏さんのとこか、合同劇だろうな。


廊下を歩きながら、話し声が聞こえた。

盗み聞きは嫌いなのだが、俺の直感で、壁に隠れた。


「今回の劇さあ、何やる?」

「人魚姫でいいんじゃない?
優人を王子にして、人魚を石山にするでしょ。
あの話、最終的に結ばれないし、役柄的にいじめられるし」

へえ、人魚姫ね。

全てが最悪な展開だ。

ゆうと、って新彼さんだよな。


「あっ!優人~。今、話せる?」

さっきの低い声と一変し、2年の女子は女っぽい声を出した。

「えっ。うん、いいけど」

声からして、優しそうだな。

「ねえ、今回の劇、人魚姫でいい?
玲菜ちゃんを人魚で、優人が王子で・・・・・・だめ?」

「あー俺忙しいから、そっちで簡単に決めといてよ。
人選はそんな感じでいいけど」


人選ねえ、と内心で新彼を罵る。

人魚姫の話、ちゃんと理解してないんだな。

困ったものだ。

童話ぐらいある程度知っとけよ。


分かったあ、という間延びした女子の声と同時に、新彼がこっちに向かって走ってきた。


「あの!」

とりあえず、第一印象は大事だから、純情少年を装った。

「えっ。何?」

息切れしながらの声で、新彼は優しく微笑んだ。

見ず知らずの人にこんなに優しい笑みをかけれる所も、魅力の一つなのだろうか。


「ゆうとって、どんな漢字なんですか?」

「えっと、優しい人って書いて、優人だけど・・・・・・なに?」

名前と性格がこんなに一致する人っているんだ、と感心する。


「いや、あの石山と付き合ってるんですか?」

「え、うん。
そうだけど、もしかして玲菜のこと好きなの?」


はぐらかそうか迷ったけど、告げ口する感じもないので、素直に言った。
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