君は変人
「桜だって、ロミオだったら格好よかったよ」


浅川にとっては、かなり勇気出した言葉だと思う。

しかし、やはり桜には届いていないのだ。


「ロミオだったら、ってひどいじゃないか。
残念ながら、俺は桜だ」


胸を張る桜を見て、浅川は口を大きく開けて笑った。

その時、浅川が何を考えていたかなんて俺には分からない。

でも、自分が頑張って言った言葉を違う意味でとられて、恥ずかしいと思ったのかもしれない。

それとも、桜に呆れたか。

どっちにしろ、そんな浅川を俺が見るのはこれが最初で最後だろう、と内心で密かに思う。


「ねえ。どこからどう見ても、付き合ってるようにしか見えないんだけど」

玲菜が俺に対して言った。

普段なら、桜にも浅川にも聞こえたはずだが、それは大笑いに掻き消された。


「俺もそう思う」


「本当はさ、桜、気付いてないだけなんじゃないの?
よくあるじゃん、そういうこと。
初めての気持ちには、誰だって気づくのには時間がかかるよ」


玲菜の言葉に俺は少し動揺する。

それは、一理あるかもしれない。

何故今まで気付かなかったんだろう。


「玲菜、頭いいな」

「いやいや、ゲンには負けるよ」

「そういう意味じゃなくて・・・・・・。
恋愛のことは、恋愛の達人が1番よく分かってるな」


褒めたわけじゃないのだが、玲菜は誇らしげに笑った。

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