君は変人
出会いはあたしが小学校2年生の時だった。

隣に引っ越してきた8歳上のトシ兄こと、中野敏明に一目ぼれしたのである。

その時、彼はもう高校生で叶うはずのない片思いだった。


だけど、この性格上見てるだけなんて、有り得なくて、年の差関係なく猛アッタクだった。


彼女が出来ることもあった。

そりゃあ、あのルックスだから。

その時は必死に妹ぶって、彼女さんを嫌味たらしく、追い返したこともあった。

だけど、そんな迷惑なあたしの行動に、トシ兄が怒ることはなかった。


今から思えば、トシ兄はそんなに本気で人を好きにならない人だったんだと思う。

それに、何となく昔のあたしも気付いていて、心のどこかで安心しながらも、日々を過ごしていた。


家族ぐるみで仲が良かったから、バーベーキュウを一緒にしたり、旅行に行ったことも何度かあった。


だけど、そんな幸せな日々は長くは続かない。

あたしが5年で、トシ兄が19歳のとき、遠くの存在になった。


トシ兄には、本気で愛せる女の子が出来たのだ。




そこまで話したところで、桜は相槌を打った。


「要するに、スーはまだ好きなんだろ?」


いきなりの発言に、あたしは絶句する。

そんなことも気にせず、桜は続ける。


「ちゃんと、フラれてないんだろう?」

何でフラれる前提なのよ、と思いながらも声が出ない。


「で、何で今更会いに来たんだ?」


ゆっくりと空気を肺に送り込み、あたしは言う。
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