君は変人
私の一言で、窓の外を眺めた。

4月の最初ということもあり、やはり桜は綺麗に舞っている。

桜は桜に弱いのだ。


「おお~。先生もいいこと考えるなあ。
最高の眺めじゃないか。
百合は、いいことに気がつくな」

珍しい桜の満面の笑みを見ると、今日の自分がラッキーだと思ったりする。


「え、うん。そうだね」

曖昧な返事をした。


「そう言えば、最近気づいたけど、桜って川さんのこと、百合って呼ぶんだね」

桜は、何がおかしいのだ、と言うような顔をした。

「そうだが、何か?」

「まあ、要するに、大抵の男子は浅川って呼ぶだろ?
だから、桜が百合って呼ぶのは珍しいことなんだよ」

源が玲菜の言葉に付け足す。


「ああ、そういうことか。
それは、わざとなんだよ。
俺はね、周りと一緒が嫌なんだよ」


そう言われれば、そうかもしれない。

玲菜のことは、苗字の石山を英語に変換し、ストーンマウンテンでスー、源は頼朝、と個性的な名前で呼んでいる。

でも、なぜ私は案外普通の百合なのだろう。

と、疑問がわいたとき、玲菜が同じことを桜に聞いた。


「百合は特別なんだ」


桜は顔色ひとつ変えずに言った。

おっと、これは殺し文句だ、と内心で胸が高まるが、冷静な私は知っている。

そう、彼には恋愛感情がないのである。


「俺ね、植物が大好きなんだ。
植物は、この世界で唯一誇れるものだと思うね。
ほら、有名な映画にもあるだろ?」

桜は目を輝かせながら、私たちを見るが、残念ながらそれだけのヒントでは顔を歪めるだけだ。
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