君は変人
トシ兄が家を出て、同棲を初めてから、あたしは来るもの拒まずになった。
本気で人を好きになることを馬鹿らしく思えたのかもしれない。
いや、本当はフラれる人の気持ちが分かるから、断れなかったんだ。
でも、すぐ別れてたら意味ないんだけど。
そんなことを繰り返していた時、優人が現れた。
優人は本当にトシ兄と似ていた。
優しく笑う所も、雰囲気も、仕草一つ一つも。
絶対に別れるものか、って思ってた。
どんなに先輩にひどいことをされても、耐えられた。
でもね、ふと気がつくの。
あたしは、優人を優人として見ているんじゃなくて、トシ兄をいつも見ていた。
ゲンが騎士として言ってくれた言葉で、あたし思ったわ。
この人を解放してあげないとって。
あたしの本当に愛する人の影にいるような人じゃない。
優人は本当に素晴らしい人だから。
「ごめん、ごめん。
あのさ、本当はもう少し話していたいんだけど、親に呼ばれちゃって。
隣りだし、玲菜の家まで送るよ」
桜は名残惜しそうにドリンクバーを見つめていた。
まだ全種類飲んでいないのに、などとぶつぶつ呟いていた。
気付くとトシ兄は会計を済ませていて、あたしも桜も深々と頭を下げて、お礼を言った。
すると、トシ兄は、
「ドリンクバーしか奢ってないけど。
パフェぐらい頼めば良かったね」と微笑んでくれた。