君は変人
「喉、渇いただろう?
泣いた後は、水分が足りないからな」
そう言って、スポーツ飲料を差し出した。
どうせなら、オレンジジュースとかが良かったのに、と思ったが、飲んでからスポーツ飲料の爽やかな喉越しに感動する。
「頼朝のこと、本気で考えてやってくれよ」
「唐突ですね~」
茶化したつもりはなかったが、桜はまた嫌そうな顔をした。
「分かってる、分かってる。
ちゃんと、ゲンのことは考えてるよ」
「でも、そんな簡単には変わらないんだろう?」
貰ったスポーツ飲料を一口飲んだ。
「まあ、ね。
だって、6年間も片思いしてたんだよ?
そう簡単には、嫌いになれない」
6年か。
14歳の私の約半分じゃないか。
「嫌いにならなくても、いいんじゃないか?」
え、と聞き返すと桜は続けた。
「思い出にすればいい。
いつか完全に敏明さんが過去になったとき、笑えるように。
あんな素晴らしい人を、嫌いになる必要はない」
「なに、格好いいこと言ってんのよ」
ありがとう、と言いたいのに違う言葉が出た。
「俺の愛読書を引用した。
気が利く言葉を選んだつもりだ」
そして、ゴソゴソと自分の鞄から、愛読書を見せてくれた。
「気が利きすぎて、怖いくらいだよ」
あたしが笑うと、桜も口元緩めた。
「やっぱり、スーは笑顔が1番だな」