君は変人

家まで送ってくれた桜は、急ぐように帰って行った。


早速、私は国語辞典を開いた。

執着心の意味を何となくではなく、しっかり明確にしたかったのである。


「・・・・・・強く心が惹かれること。
心が捕らわれて思いきれないこと、か」

一人で呟いて改めて、その言葉の意味を実感する。


つまり、簡単に言えば、彼は人間に興味を抱いていない。

それは、どこかとても悲しいもののように私は思えた。


私が桜を好きになったきっかけも、きっと興味を抱き惹かれたからだ。



初めて君を見たあの瞬間、きっと私の中で何かが動きだした。

いつも思ってることと表情が反比例して、うまく周りに気持ちが伝わらなかった。


そんな私に、偽りの愛を捧げてくる男子が憎らしくて、酷い言葉をかけた時もあった。

試しに付き合ってみて、私の性格を実感して、逆に酷い言葉を言われた時もあった。


鉄仮面、人形、ロボット、そんなことを男女問わず言われた。


実際自分でもそのことは、重々承知だから、特に気にしていなかった。

でも、本当は気にしてないふりで、すごくすごく傷ついていたんだと思う。

鉄仮面はとうとう、自分の心まで隠していたのだ。


それが君に出会って変わったんだ。

自分が世界で唯一のかけがえのない存在だって、教えてくれた。


気付けばどんどん惹かれてて、今ではこんなに普通の片思いガールだ。



君がときどき、
どこかへ行ってしまうんじゃないかって、
すごく心配になる。

一生懸命掴んでないと、
雲のように
風のように
飛んで行ってしまいそうで、
私はそれがどうしようもなく怖い。


友達でもいい。
彼女にしてなんて言わない。
これ以上何も望まない。
だから、今が変わらないでほしい。


< 73 / 145 >

この作品をシェア

pagetop