君は変人
そんな最悪な印象が、好きまで変わったのだから、自分でもびっくりだ。


あれは仮入部期間中のことだった。


俺は、部活に入る気が全くなかった。

まず、うちの学校の部活は少ないわりに、男子の運動部は結構いい成績を残していて、簡単に言えば、部活に熱心なのである。

面倒くさがり屋で、運動もさほど得意でない俺にとって、それは部に入るなと言われているようなものだ。


「えっと、げんくんだよね?」

初めて話したときに、名前を間違えられるというのは、かなりマイナス点だった。


「みなもと、だけど」

「そうなの!?
まっ、いいじゃん、いいじゃん。
ゲンって呼ぶ~」

「何でもいいけど、何だよ」

我ながら、全く無愛想だ。


「ゲンさあ、思うんだけど・・・・・・もっと笑えば?」

「は?」


一応言っておきたいのだが、これは初対面での会話だ。

俺の無愛想で、気分が悪くなるような受け答えについては、大目に見てもらいたい。

もっと笑えば、など名前も知らない奴に言われ、俺は少なくとも動揺しているのだ。


「ほら、またそうやって、眉間にしわ寄せるー。
笑った方がいいよ、ゲンは。
絶対そのほうが格好いいから」


玲菜はそう言って笑った。

実際俺は、この笑顔で玲菜を好きになったっと言っても、過言ではない。

傍から見れば、かなりくだらないことだと思う。

だけど、人が人を好きになるきっかけなんて、大抵そんなものだと俺は思う。


一つ理解してほしいのだが、俺は決して玲菜の顔に惚れたのではなく、性格を好きになったのだ。

確かに笑顔というと、まるで顔で選んだと取られやすいが、それは違う。

厳密に言えば、その笑顔で玲菜を知りたいと思い、それから好きになったという方がいいだろう。



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