君は変人
「そんなこと言ったら、チョコあげなーい」
我ながら小悪魔だと思う。
だけど、ゲンが次に何を言ってくれるかが、すごく楽しみで、あたしはつい意地悪をしてしまう。
この調子じゃ、いつかゲンに嫌われてしまうかもしれないのに。
「マジかよ。
ごめん、ごめん。
玲菜さん、ください」
肩幅も大きくて、男って言うより漢。
声は図太くて、低くて、髪は短髪。
だけど、ただのガキ大将じゃなくて、むしろチキンで、可愛い。
「嘘だよ、うーそ。
ちゃんとあげるって。
ゲン、本気にしすぎ」
苦笑しながら、ゲンの肩を軽く叩いた。
ゲンは少し真面目な顔になって、言った。
「本気にするよ。
好きな子から、チョコ貰えるか、かかってるんだから」
こうやって、まじまじとゲンの顔をみると、普通に格好いいんだなあと思う。
普通にって言うと、上目線でそこまでだと言ってる風に聞こえるが、そういう意味ではない。
川さんのように綺麗と感嘆するような美しさでも、桜のように整ってるという美男子系な美しさでもないが、何か目を惹く格好よさがある。
「ゲン、いつからそんな積極的になったの?
何か今日は漫画みたいなことばかり、言ってるんだけど」
「桜が、うん、言ってたんだ。
積極的な方が女は喜ぶらしい。
思ったことは全部言えってな」
桜、恋愛感情ないくせに、相談は良くのるんだよね。
本人いわく、第三者の恋愛は得意らしい。
「全部、思ってたんだ」
呟くように言ったあたしの独り言を、ゲンは聞き逃さず、すぐに顔を赤くした。
「そういうとこ、つっこむなっつーの」
腕で顔を隠そうとしているが、隠れきれてない。