君は変人
がさごそと、あたしは鞄から手探りで箱を取り出した。

ゲンが息をのむのが分かる。

「はい、どうぞ。
手作りなんだからね」

「ありがと。
真面目に嬉しいわ。
もったいなくて、食えねえし」

一応、ゲンのチョコに一番手を入れた。

世間一般的には、本命チョコというものに近い。


「せっかく作ったのに、腐っちゃうじゃん」

「ジョークだって」


そう言って笑うゲンは、本当に嬉しそうな顔をしていて、たかがチョコ一つで、なんて言えないよと思った。

今までこんなに純粋に、あたしを思ってくれた人はいただろうか。

いや、きっとゲンが初めてだ。


今までの男子は皆、付き合ってみたい、という理由だけで告白してきた。

もちろん、ある程度の男子じゃなきゃ受け入れなかったけど、それでもほぼ来るもの拒まずだった。

優人のように例外もいたけど、ほとんどは見栄張りとか、そういうのであたしを利用していた。

容姿もどちらかと言えば、悪くない方だし、性格も比較的明るいし、そんなあたしを本気で好きになってくれる人はいなかったんだ。


「なあ、玲菜。
俺の気持ち、知ってんだろ?」

横目であたしを見るゲンに、縦に首を1回深く振った。

「俺、何となくお前に好きな奴がいたの、知ってたよ。
だからさ、すぐにとは言わないけど、ちょっとは考えといて。
玲菜のこと、本気で好きな奴もいるってこと。
だけど、気とか使って、返事するなよ。
そんなので付き合えても、少しも嬉しくねえからな」


言葉一つ一つがゲンらしくて、自然と笑みがこぼれる。

笑ってないで何とか言えよ、と照れながら言うゲンが面白くて、ついつい笑ってしまうけど、それが収まるようにゆっくりと息を整えた。


「ゲン、すごく嬉しいよ。
ありがとう。
ちゃんと想ってくれてるからこそ、ゲンには気を使わないよ。
今はだめでも、いつか言うからね」


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