君は変人
告白の後に、こんなに優しい言葉をかけたのは初めてだ。

いや、これが普通で、今までが異常だったんだ。


だって、きっと本当は告白ってこれくらいドキドキするものでしょ?

自分の秘めていた思いを告げるんだもん。


「そうしてくれると、有り難いよ。
俺、そういうの苦手だから」

クシャクシャと、ゲンは短い後ろ毛を掻きたてた。

シャンプー楽そうだな、と意味もなく思う。

ゲンはあたしの考えていることを何となく分かったのか、玲菜ってシャンプーのプッシュ何回してる?、と聞いてきた。


「3回くらいかな?
コンディショナーもしてるよ~」

「え、マジで。
1回じゃ、無理なわけ?
コンジショナア・・・・・・?」

噛み噛みのゲンに、ダサーイと笑うと、恥ずかしそうに袖で顔を隠した。

意外と照れ屋でシャイなんだよね。


「別に、そんなの知らなくても、男はいいんだよ。
ほら、女子だって、知らないこといっぱいあるだろ?」

「いや、コンディショナーは常識っしょ。
まあ、ゲンには無縁かあ」

「そうそうっ。
俺には無縁なんだよ。
つか、そんなに髪長いと大変だよな」


胸ぐらいまである髪は、今日は珍しく2つに結っていて、ゴムの少し下くらいをゲンは優しく触った。

生まれつきの少し茶色っぽい、やや痛み気味の髪だが、ゲンがなでるとCMで出てきそうなサラサラ髪になりそうだった。

不快感なんて全くなく、すごく心地よかった。

ゲンの髪を見つめる瞳も、すごく優しくて、本当に安らいだんだ。


「うわ、すまん。
つい、触っちまった」

ゲンの言葉で、はっと我に帰る。

ううん、と言いながら毛先を触り、冷静を装う。


お互いの心臓の鼓動が聞こえている気がした。

そう思うと、もっと恥ずかしくなって、もっともっと心臓が波打つ。


止めなきゃって思えば思うほど止まらないドキドキは、何となく次の恋を予感させた。


勘違いじゃないといいな、と思う自分がいた。


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