君は変人
桜は、少しうきうきしていた。

未来というより、自分の時代を話すことが楽しいのだろう。

きっと、ここ1年、ほとんど意見ばかりで、自分の思い出や話をすることはなかったのだから。


「いじめも、なくなったんだ」


“いじめ”とは現代社会をつかさどる、問題だ。

これを解決することは、可能なのか?


「女子のいじめは、大体が男関係だろう?
だから、恋愛感情がなくなって、異性自体への興味がなくなると、そんなことどうでもよくなる。
ブリっ子だと言われ、嫌われていた子も、それがなくなれば、男女の友情は成立し、何の問題もなくなる」


「異性関係以外のいじめは、なくならないでしょ?」

「いや、まあ言ってしまえば、他人への関心がほとんどない。
休み時間に本を読んでいても、地味だなんて罵られることはないし、皆が自分の時間を自由に使っている。
他人のことは、どうでもいいんだ」


そう言われて、はっと気づく。

桜の、興味のあることにはすごく熱中し、興味のないことには関心のかけらも抱かない、性格を。


『他人のことは、どうでもいい』という桜は、本当に冷たく感じて、私もきっと他人の部類に入るだろうな、と思うと一層悲しくなった。


「じゃあ、今まで観覧車とかブランコに乗ったことないとか、言ってたのは何?」


普通に暮らしていれば、それに出会わないことはない。

未来は一体、どうなっているのだろう。


「厳密に言えば、遊園地も公園も存在しない」


驚いたとしか、言いようがない。

もしも、ここに誰か人が通りかかったとしたら、きっと私たちを変な目で見るだろう。

私なら、そうする。


「それは、どういうこと?」



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