君は変人
気になってるのかな、と玲菜は言い、案外答えは早くに出たな、と少しつまらなくも思った。


「だと思うけどな、俺は」

「でも、川さん、桜のことすごく好きじゃん!」

いきなり大声を出す玲菜に、そんなこと俺に言われても、と戸惑う。


「じゃあ、玲菜は敏明さんに恋愛感情なくても、ずっと片思い出来たか?」

「何で知ってんのよ」という、玲菜の即答で、口を滑らしたことに後悔する。

「ごめん。
桜から、何となく大まかなことは聞いた」


謝る俺の言葉はスルーし、桜への暴言を吐き続ける玲菜に、もう1度同じ言葉を投げかけた。


「そんなの・・・・・・分かんない」

「いや、絶対6年も続かない」

俺は、はっきりと断言する。

何となく桜の言い方に似ていたからか、玲菜は反抗心をむき出しにして、食らいついてきた。


「何で断言出来んのよ。
そんなの、誰にも分かんないでしょ」

「敏明さんに彼女ができても、玲菜は本当は内心でこう思ってたんじゃないか?
次はあたしかもしれない、トシ兄はあたしを好きになってくれるかも、ってな」

違う、と俺の目も見ず言う玲菜の顔が、引きつっているのが分かる。


「いや、そうだ。
誰しも少なからずの期待を抱き、夢を願っているんじゃないのか。
そうだろ?」

玲菜は下を向き、頭を上下に揺らした。

敏明さんのこと思い出しているかもしれないな、と不意に思う。


「俺だって、思ってた。
玲菜に彼氏が出来るたび、次は俺かもしれないって、期待してたよ。
ただの勘違い野郎だけどさ、それが普通だよ。
でも、浅川はどうだ?
恋愛感情のないやつに、どんな期待を抱くんだ?」

玲菜の表情を窺う。

改めて考えて、やっと浅川の切なさが分かったのだろう。


「あいつは、すごいよ。
1年間ずっとずっと、桜だけをどんな思いで見てきたのかって思うと、俺は胸が痛くなる。
たまには、他の男に揺らいだっていいんだ。
いや、むしろそいつに恋した方が、あいつは幸せなのかもしれないな」


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