【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
「仁菜、昔の話を少ししようか」
『……』
昔って、一体いつ…。
ビールを口に含んだ後唐突に話し出した涼は、私と涼が出会った頃の話をした。
それは私が11歳で涼が15歳の時の話。
…私が小学生で涼が高校生の、話。
「俺仁菜が初めて家に来た日の事今でも覚えてるよ」
『………』
「親父の少し後ろに隠れるようにいたっけ…」
『そう…だね』
「あの時俺がよろしくって頭撫でようとした時…仁菜は泣いて拒否ったよな…」
『………』
忘れていない。
それは私も覚えてるよ…
「あの時多分俺も親父も思ったんだ。“この子は男に触れられない”って」
どこか遠くを見ている涼はあの日の事を思い出しているのだろうか。
私はまぶたを閉じた。
「それって違うよな?仁菜は“大人の男に頭を触れられた”らダメなんだろ?」
『…うん』
…涼の言う通り。
間違っていない。