【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
『…涼もできるんなら翔だけじゃないって、事でしょう?』
だって普通に考えてそうだと思う。
翔だけが触れたんなら翔が特別なのかも知れないけど、涼も…ほかの人も大丈夫なら話は別。
「…話聞いていたか?」
はぁーっと溜め息を吐いた涼はペシンっ私のおでこを叩いた。
…地味に痛い。
空気の乾いた冬ってやけに肌に響く気がする。
叩かれたおでこをさすりながら涼を睨めば「表情豊かになったな」と言って少し寂しそうに笑った。
『…え?』
「お前笑うようになったよ。前よりずっと」
……私が…?
自分で言うのもなんだけれど、愛想笑いこそすれど私は表情に乏しいと自分でもわかっていた。
…どこか冷めている、と。
「今、俺が頭触っても翔が触った時みたいな表情はしてないよ…」
…そうなの?
自分では自分の顔は見えないから、どんな風なのかはサッパリわからない。
「あいつにだけだろう?頭触られて“安心”するのは」
『…ん』
「だからそれを世間一般で恋っつーんだよ」
おわかり?って言った涼は私に恋のレクチャーをしてきた。
それにはかなりの割合で下ネタが盛り込まれていて、心底うんざりしたけど。
…こんな身内のような存在のそんな話は聞きたくない。
そもそもそんな話自体好きじゃない。