【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
部屋に帰ってスイッチを点ける。
無駄に広い部屋。
見もしないでかすぎるTV。
スピーカーやホームシアターまである。
真ん中を陣取るガラステーブルにそれを囲むようにある革張りのソファー。
私にとってそれは何の意味も持たない。
夜景が綺麗なのが売りなのかなんなのか、17階のここからはキラキラ輝く光が全面ガラス張りの窓の向こうに見える。
全く生活感なんてないこの部屋が、このモデルルームのような部屋が私の家。
マイハウス。
“ただいま”を言った所で“おかえり”をくれる人は誰もいないから言わないけれど。
代わりにガミさんにおやすみと告げて別れた。
お風呂に入るために脱衣所に行くと嫌でも目に入る。
染めてないアッシュブラウンの髪はさらさらのロング。
グレーがかった目はくっきり二重。
白すぎる肌とは裏腹な赤い唇。
紛れもない、自分。
大嫌いな私の、顔。
でもこれが私の商売道具。