【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
その日は珍しく雪のちらつく寒い日だった。
車にうっすらと積もった雪を手に取りハシャぐ子ども達を、車から眺めて元気だなと思う。
寒さに滅法弱い私は朝から少し、緊張していた。
「まったくありえないわよね。こんな日に仕事なんて!」
車を運転しながらこれで5回目になる言葉を発したガミさんは、もう三十路オーバーになった。
そう。
今日は2月14日。
ガミさんの31回目の誕生日。
世間一般ではバレンタインデー。
『…去年も仕事だったでしょ』
言えば、ガミさんは憤慨する。
「去年は去年。今年は今年よ!」
…なんなんだ。
その屁理屈は。
普通に考えて誕生日が休みなんて、ないと思う。
だって学生でもそんな事はないのだから。