【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
考えるばかりの私にチャンスは突然訪れた。
「オツカレ」
そう言って隣に座ったのは翔。
今から待ち時間になるらしい、翔。
『…おつかれ』
まだ撮影は続いていて私達の周りには今誰もいない。
今がチャンス。
今だけがチャンス。
「…なぁ」
『…何?』
けれども先に話を切り出したのは翔。
椅子に深く座る翔は真っ直ぐにこちらを向く。
何を言うのか…
その間に、いやにドギマギとした。
「仁菜は、さ…」
『…ん』
私の髪の毛をゆるゆると指先で弄ぶ翔に、以外に近い距離に、ドキドキする。
ふんわりと香るシトラスの匂いに安心する。