【完】白い花束~あなたに魅せられて〜


少し薄暗い地下駐車場を、カツカツと歩けばすぐに、見覚えのある車を発見して乗り込む。


『…待った?』


「待った」


シートベルトを着けていた私に返ってきた声。


『…ごめん』


「嘘だって」


ハハッと笑った翔は手の止まった私のシートベルトを取って、カチャリ、着けてくれた。


ポンっと頭に乗る手は暖かくて、じっと見ていた私に翔は



チュッ




短いキスをした。



『………、』


「じゃぁ行くか」


硬直する私の頭をポン、再度撫でて車を発進させた彼。


何、今の…?


ただ、困惑するしかない私の視界には、夜に傾いた濃紺な薄暗い空と、ぽつりぽつり、灯り出した街頭が写っていた。


< 132 / 410 >

この作品をシェア

pagetop