【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
少し薄暗い地下駐車場を、カツカツと歩けばすぐに、見覚えのある車を発見して乗り込む。
『…待った?』
「待った」
シートベルトを着けていた私に返ってきた声。
『…ごめん』
「嘘だって」
ハハッと笑った翔は手の止まった私のシートベルトを取って、カチャリ、着けてくれた。
ポンっと頭に乗る手は暖かくて、じっと見ていた私に翔は
チュッ
短いキスをした。
『………、』
「じゃぁ行くか」
硬直する私の頭をポン、再度撫でて車を発進させた彼。
何、今の…?
ただ、困惑するしかない私の視界には、夜に傾いた濃紺な薄暗い空と、ぽつりぽつり、灯り出した街頭が写っていた。