【完】白い花束~あなたに魅せられて〜


「お前みたいなの見ててイラつくんだよ」



私はただ車内にゆらゆらと充満する紫煙を眺めていた。



…悔しいけど翔の事で頭がいっぱいだったのは事実。



だけど…彼になんでここまで言われなきゃいけないんだろうか。



憤りを感じながらもじっと窺う様に彼を見ていた。



「…翔とデキてんだろ?」


『…ちがっ…』



目の前の榎本海斗は昼間に見た礼儀正しい彼じゃない。



真っ黒な瞳には何も写していないような、底冷えするような何かを感じる。



頭ではわかってる。
この雰囲気がいいものじゃないって。



今、何故だか逃げなきゃいけない。
そう頭が信号を発している。



だけど、小刻みに震える身体は動かなくって。





ただ近づく彼をじっと見る事しか出来ない。



「お前みたいなの見てると反吐が出そうになる。……俺がめちゃめちゃに壊してやるよ」



そう言った榎本海斗に後頭部を押さえられて…



『…やっ……んんっ……』



唇に感じる感触にぞわりと肌が粟立った。


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