【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
その日の夜私のマンションで久々に会えた翔に、ドラマの事を話したら。
「それ大河も出るやつじゃん」
ビール片手にソファーに座る翔に言われた。
翔の隣に座ってカフェオレを飲みながら考える。
大河がホームドラマに…?
なんか悪いけど大河ってホームドラマとかより恋愛ドラマって感じだけど…?
私といい、大河といい、なんかミスキャスト?って少し思う。
まぁ今更変更できないんけど。
そこまで考えて不意に浮かぶ榎本海斗。
あの人なんで演技指導なんか…
「………仁菜?」
『…え?』
「深刻な顔してるけど大丈夫か?」
『…………別に大丈夫』
一瞬頭に過ぎった言葉。
“榎本海斗が嫌”
“ドラマ出たくない”
その言葉が無意識に喉まで出てきて危うく言いそうになる。
だけどそれをしないのは、翔の為じゃない。
自分の為。
嫌われたくない。
煩わしい存在になりたくない。
…捨てられたくない。
そんな感情が私を支配するから言えないだけ。
そんなのただのエゴの塊だ。