【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
ドラマの撮影でスタジオに行くと言って、マンションまで迎えに来たのは榎本海斗だった。
「乗れ」
『……………』
仏頂面でそう言った榎本海斗を睨み付けて、歩いてスタジオまで行こうと思った。
こんな人の車に乗るくらいなら、遅刻した方がマシ。
「プロ意識のねぇ奴」
だけれど榎本海斗の言葉に足を止める。
『…あんたが変な事するからでしょう?』
「何勘違いしてんのか知らねぇけど、俺はお前なんか好きじゃねぇよ」
『…はぁ?』
わかってる。
そんな事。
アレが好きな人にするものとは違うって事くらい私にもわかる。
「てめぇの仕事はちゃんとやれや」
『…………』
ギッと睨んで、車に乗り込んだ。
シートギリギリに座って窓を開ける。
この人と同じ空気を吸ってるってだけで、吐きそうになるから。