【完】白い花束~あなたに魅せられて〜


撮影自体は普通だったのだけれど、榎本海斗の宣言通りに行われる演技指導は私にとってとても酷なものだった。



『“お母さんっ”』


「違う」


『“お母さんっ!”』


「…違う」


『“〜!お母さん!!!”』


「…てめぇふざけてんのか?」



榎本海斗はあれから私に触れる事はなかったけれど、違う意味で私はボロボロだった。



毎日毎日繰り返される演技指導。



いたくもないこの人と密室で2人きり。



演技指導をする榎本海斗が必然的に私と行動していて、ガミさんは亜美奈と珠璃に付いていて。



『………嫌い』



ギッと睨めば



「はいはい俺もだ。タバコ吸ってくるからここまで覚えとけ」



スました顔して会議室を後にした。



…なんで私が軽くあしらわれる感じになってんのかわかんない。


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