【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
楽屋に入ってタバコに火を点けた榎本海斗。
私は最大限に離れて奴を見る。
「…お前さぁ、大河と何やってたわけ?まさか遊んでたなんてねぇよなぁ?」
『…遊んでない』
怠そうにパイプ椅子に座る榎本海斗を私はただ突っ立って睨んでいた。
「…てめぇみたいなのの演技見てたらイライラすんだよ」
『……』
「やる気ないなら辞めろ」
…気持ち悪い。
榎本海斗が吐き出す紫煙に私は吐きそうになる。
なんでこの人にこんなにも私は責められるのだろう…?
そんなに偉い存在?
そんなにすごい存在?
『………な…い』
ふつふつと湧き上がる感情。
「あ゛ぁ?」
ギロリと睨みつけてくる榎本海斗に私もイライラする。
『…あんたなんかに言われたくない』
「何?」
左腕を握る右手に力が入る。
『…あんたなんか、売れない俳優だったくせに…私がそんなに羨ましいの?』
お腹の中に溜めたモノを吐き出してしまいたい。