【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
「おい」
榎本海斗が席を立ったのがわかったけれど、まるで一度壊れたダムのように、私の気持ちが溢れ出す。
『…私はっ…別にアイドルになんて興味なかった…そんな私が売れて…腹が立つんでしょう?だから…』
「…だ、ま…れ」
『だから私につっかかるんでしょう!?そんなのただの八つ当たりじゃないっ!!』
「黙れ!!」
ガンッ
ヒステリックに叫んだ私は、榎本海斗の長い足によってパイプ椅子が蹴られた音で、ハッとする。
『…………』
……私…今何て言った?
…榎本海斗に何を言った?
一番言ってはいけない事を―…
言ってしまったんじゃないの…?
「…そうだよ。てめぇみたいな中途半端が俺は一番嫌いだ」
がン
もう一度パイプ椅子を蹴って、こちらに近付いて来る榎本海斗に。
…この前と同じ感覚になる。
身体が震えて動けない。
だけど、どこかスローモーションに見えて、目の前の榎本海斗を見ているはずなのに…
私の心は…
ここにはない。