【完】白い花束~あなたに魅せられて〜


なんで私は殴られているの?
―私は何を拒否した?



何を忘れた?



ヒュゥッのどが鳴る。



『やだっ!やめてっ殴らないでぇっ!!』


「…おい?」


『いやぁぁあぁっ』


「おいっ!!仁菜!!!」



そこでハッとした。



目の前には榎本海斗がいて、肩を激しく揺さぶられている事に気付く。



『触らないでっ!!』



身体は小刻みに震えていて、目から溢れる涙の意味はわからない。



ただ怖い。



すべてが恐い。



はぁはぁと肩で息をしているのは私で…なんでこんなにも恐怖心があるのかがわからない。



………翔に会いたい。



やだ。



もう嫌だ。



「おいっ!仁菜っ!!!」



私は楽屋のドアを開けて、走り出した。



この場から逃げたくて。


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