【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
私は翔といれたらそれでいい。
芸能界でなんて、何も望んでいない。
いつ辞めてもいい。
じっと翔を見れば、閉ざしたままだった唇を開いた。
「…俺は仁菜がアイドルとして頑張ってるの知ってる」
『………』
「本当に仁菜には何もないのか?ファンや培ったものがあるだろ?」
…なんで
「俺はアイドルを辞めないし、仁菜にそんな狭い世界で生きて欲しくはない」
なんで、わかってくれないの…?
私は翔だけなのに…
それだけじゃダメなの…?
「だから辞めるなんて言うな」
私はそっと頭を撫でようとした、翔の手を振り払った。
パシンッ
乾いた音が響く。
それは私が初めて翔にした行為。
…胸が痛い。