【完】白い花束~あなたに魅せられて〜


「…親父は仁菜の母親を捨てたんじゃない。仁菜の母親が親父を捨てたんだ」


『…え?……お母さんが…?』



涼に抱えられてリビングのソファーに座らされた。



冷蔵庫からカフェオレを取り出した涼に手渡される。



それを無言で受け取って一口飲めば、少し落ち着いた気がした。



「仁菜の母親…サリアに会ったのは私が32歳の時だった」



壱成さんは私に対面したソファーに座って話し出した。



お母さんとの出会いを―…





壱成さんは言った。



お母さんとはドラマの撮影で知り合ったと。



当時まだ若社長として現場に足を運んでいた壱成さんは、ほぼ無名だったお母さんに惚れた。



撮影期間中に男女の関係になったのだけれど、撮影が終わると同時に関係は終わったのだと。



そのままお母さんは壱成さんじゃない人と結婚したらしい。



…それがつまり、私のお父さんと呼んでいた人物。


< 243 / 410 >

この作品をシェア

pagetop