【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
「…親父は仁菜の母親を捨てたんじゃない。仁菜の母親が親父を捨てたんだ」
『…え?……お母さんが…?』
涼に抱えられてリビングのソファーに座らされた。
冷蔵庫からカフェオレを取り出した涼に手渡される。
それを無言で受け取って一口飲めば、少し落ち着いた気がした。
「仁菜の母親…サリアに会ったのは私が32歳の時だった」
壱成さんは私に対面したソファーに座って話し出した。
お母さんとの出会いを―…
壱成さんは言った。
お母さんとはドラマの撮影で知り合ったと。
当時まだ若社長として現場に足を運んでいた壱成さんは、ほぼ無名だったお母さんに惚れた。
撮影期間中に男女の関係になったのだけれど、撮影が終わると同時に関係は終わったのだと。
そのままお母さんは壱成さんじゃない人と結婚したらしい。
…それがつまり、私のお父さんと呼んでいた人物。