【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
『…私は、壱成さんに恩返ししたくて言われるがままに芸能界に入っただけ…だから…』
「ちょっと待って!」
私の言葉を遮ったガミさんは私の震える手を両手で握りしめる。
伝わる体温は暖かくて、安心できた。
「パパが仁菜を芸能界に入れた理由知ってる?」
『…』
理由?
理由なんて、あるの…?
じっと握られた手を見つめて考えても私にはわからない。
「…仁菜が、いろんな人と関わるように。感情表現が豊かになるように…よ。パパは仁菜の為にしたのよ。…愛してるから」
柔らかく笑ったガミさんに、やっと止まった涙がまた流れ出す。
なんでここの人達は私をこんなにも泣かせるのが上手いんだろう…?
なんで、こんなにも暖かい気持ちにさせるのだろう…?