【完】白い花束~あなたに魅せられて〜


翔は私の身体をぎゅっと抱きしめてから、少し離した。
表情がよく見える距離。



「…仁菜は本気で芸能界辞めたいのか?」



その質問はさっきの続き。



その言葉にふるふると首を横に振った。



『…私いつの間にかファンの人達や共演者の人…みんながかけがえのない存在になってた。
みんなを切り捨てられない。
裏切れないの』



翔はそれに「そうだな」と言って優しく笑った。



『翔とずっと一緒にいたいなんてただのわがままだって、私わかったよ。それに私翔の歌もダンスも演技も好きだから…』


「俺も仁菜の歌や演技が好きだよ」



その言葉に嬉しくなる。
それだけで嬉しい、頑張ろうって思える。



『…だから榎本海斗の事は嫌いだけど、あいつの言ってる事も間違ってないって思えた。
頑張ろうって…思えたよ』


「…あいつに何言われたんだよ?」



…あ、翔の声が低くなった。
眉間に皺が寄ってて、少し怖い…



眉間を指差して『そんな顔しないで』言ったら元に戻ったけれど。


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