【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
「ねぇ仁菜〜?」
『何?』
レッスンが終わって、ミネラルウォーターを飲みながら亜美奈が私の隣に座る。
「榎本はクビにするんだろ?」
亜美奈とは反対側の私の隣に座った珠璃が私の肩に腕を回しながら言う。
その顔はあまりにも無表情で、そんな顔で言葉を口にする珠璃が少しだけ怖く感じた。
『しないよ』
汗を拭って、口に透明の液体を流し込む。
…あぁ美味しい。
全力で受けたレッスンで身体がヘトヘト…
そんな私からミネラルウォーターを取り上げた亜美奈は
「なんでなの!?」
珍しく間延びした話し方じゃなかった。
両隣をがっちり固める2人からは決して逃げられない。
まぁ逃げるつもりなんてないけれど。
2人には話さなきゃいけないと、思う。
それがせめてもの償いだと思うから。
『榎本海斗は悪くない』
「「…はぁ?」」
それは珍しく2人の声が重なった瞬間だった。
ふざけのない顔。
真顔ではぁ?なんて言われたら、責められてる気になってくるわけで…
それでも私は2人に今までの事を話した。
自分の過去の事も織り交ぜながら。