【完】白い花束~あなたに魅せられて〜


「まぁ…榎本海斗の事は許せねぇけど…良かったな?ガミさんと姉妹で」



少し言葉を濁して珠璃は立ち上がった。



それはこの話はお終いという意味が含まれていて、彼女はそのままスタジオを後にする。



「…あれ、多分嬉しいんだよぉ〜仁菜に家族が出来て
珠璃って変な所で恥ずかしがり屋だよねぇ〜」



今まで泣いてたくせにねぇ〜と付け足し、クスリと笑った亜美奈は



「まぁ千夏ちゃんがお姉さんってよりは仁菜がお姉さんみたいだけどねぇ〜」



なんて言っていたけれど。



ついこの間までならそうだと肯定していたけれど、今はそうは思わない。



ガミさんはやっぱり年上で、私なんかよりも考え方は遥かに大人。



普段しっかりしていなくても、いざという時は頼りになるし、私を暖かく見守ってくれる存在。



すっかり温くなったミネラルウォーターを飲み干して



『亜美奈も珠璃もありがとう』


呟いた。



「…何か言ったぁ?」



ドアに手をかけていた亜美奈は不思議そうな顔で振り向く。



『ううん、じゃあ事務所戻ろうか?』



そう言い直して彼女の背中を押した。



亜美奈に“ありがとう”の言葉は届いていて、柔らかく微笑んでいた事を私は知らない。


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